彼にとって、わたしはどのくらいの存在だったのだろうか。

 時々、考える。とりとめもなく。無駄なことを。
 彼はわたしに優しかった。それなりに大事にしてくれた。
 けれど何も教えてはくれなかった。
 教えないやさしさ、なのかもしれない。教えないで大事にしてくれたのかもしれない。
 わたしが軽く見られた結果、守らねば、では隠さねば、と。




 頭を鈍器で殴られたような感覚だった。彼が、異能力者。
 聞いたことがない。
「……最近、気づいたとかでしょうか、能力に」
 肯定をしてほしいだけの質問に、意味はない。
 ――――いいや。前々からわかっていたが。研究と実験のため政府に連絡したようだ
「……そうですか」
 つめたい声に、なってしまっただろうか。質問に答えてもらったのに、なんてやつだ。そう、なんてやつ。……頭がぐらぐらする。
 今まで理解済でいた人間が、途端に異質なものと化す。一緒に囲んだ食卓、たまに並んで帰った放課後、それらすべての風景に写る彼が、ぽっかりと異質な存在になってしまった。いや……ああ……そうか、彼を理解した気になっていた、だけなのか。
 わたしは、彼の上辺すら知れていないのか。

 いつもそうだった。彼の意向は常にわたしの考えられる範疇を超えて働いており、白痴のわたしはそれを理解できないばかりか、気づくことすらできない。目を閉じてばかりだ。
 ぼうっと熱をもった頭のまま、お父さんに挨拶をして帰宅した。
 反芻する。……異能力。スマホを開いて、検索欄に打ち込む。先天的……後天的……彼はどちらなのだろう。わからない。何故なら、勉強していないからではない。彼に教えてもらっていないからだ。深い森に迷い込んだような焦燥と寂しさ。幼稚園の頃から隠していた? それとも、……。深い森。あの時も?

 そういえば、と思った。
 そういえばそうだわたしは、彼の特異性を見たことがある。









【以下、異能力者no.-----の異能に関する[6514字]の記述。削除済】


【担当:     】









 ……これに気づいた時、わたしは怒りでいっぱいだった。だから、また考えなしに彼に詰め寄ることしか考えられなかったのだろう。
 でも大事なことは、そう、隠したいはずの異能を、わたしを助けるために彼が使ったこと、だ。

 彼はわたしを、たすけてくれたのだ。
 それなのに。