毎朝起きたら、というか中也に起こされたら森さんに挨拶しに行って、朝ごはんを食べる。彼らはあんまり規則正しい生活を送っていないようで、わたしとの朝ごはんが夜ごはんだったり、わたしを起こしに来た中也がわたしと入れ替わりに倒れるようにベッドになだれ込んできたりすることもある。そういう時は無理矢理上着を脱がせて布団を被せている。

 ていうかこのベッド、もといこの部屋は結局誰のなんだ。

 わたしが目覚めた時には森さんも寝ていたから、てっきり森さんの部屋なのかと思っていたが、実はそうでもないらしい。たまにこの部屋に遊びに来るけど、わたしとお茶して、映画とか小説とか、作りものの世界の話をしたらそれで帰ってしまう。しかも森さんをボスと呼んでいた中也がこの部屋に入る時はノックもせずズカズカ入ってくるところを見ると、ここはわたしの部屋というか、わたしに割り当てられた部屋……。なのか?
 こんなデカい部屋をいただけるあたり、以前のわたしはめちゃくちゃすごい人だったのかもしれない。そんなわけはないが。

 ところで最近のわたしは運動不足だ。どうしてかと言うと、自分の部屋(?)と森さんの居るところ の往復しかしていないから。
 言われるがまま行動してきたので、自然とそうなってしまった。
 現在わたしが置かれている状況は軟禁中なのか、療養中なのか何なのか分からないが、外に出ておさんぽがしたい。窓から見える景色的にここはヨコハマだろうから、街を歩いたらきっと楽しい。
 というわけで中也に進言してみた。
「駄目に決まってんだろ」

 駄目だった。

 なんでなんでとじたばたするわたしをよそに、至極冷静に否定をつづける。
「なんでえぇ」
「なんでも」
「夜ごはんまでには帰ってくるから」
「駄目だ」
 理由も教えてくれないし、これはもう有無を言わさず駄目ということなのだろう。やっぱり誘拐で監禁なのかもしれない。
「運動不足! 運動不足!」
「部屋ん中駆け回っとけ」
「ハムスター?」
「ここらへん滑車でも付けとくか」
「やっぱりハムスターだ」
 中也が滑車をつける場所を両手で具体的に示してくれているところ申し訳ないが、こちらとしてもずっと同じ場所の往復だけだと気が滅入ってしまう。
 それより何より、なんというかこう、おなかまわりがだいぶ豪華になってきたというか……ここのご飯はおいしいばかりではなく、量も山盛りなのだ(主に森さんの餌付けにより)。
 別に太ったからって何がどうということもないが、不健康はいやだ。なんとか外出の許可をもらいたい!!
「散歩! 散歩! わたしは元気!!」
「歩こう歩こうだろ」
「散歩がだいすき!! どんどん行こう!!」
「歩くの大好きだろ」
 おとといくらいに一緒に観た映画の主題歌を使って訴えるも、中也は一向に首を縦に振らないばかりか、歌詞の訂正をしてくる。
 だけどめげない。ぜったいにおそとであそぶんだ。
 かくなるうえは……こうするしか!!
「このままなら、もう中也とお話ししないよ!」
「しゃーねーな」
「効くんかい」
「あ?」
「なんでもない」