欠けた彗星星星
生まれてはじめての彼氏ができた。
澁澤辰彦くん。とっても頭が良くて上品な男の子。あんまり喋らなくて、周りからは素っ気ないヤツだってよく言われているけれど、ほんとうはすごくやさしいひと。
たまに微笑んでくれた時なんか、たまらない。辰彦くんに構ってもらいたくて、休み時間にひとり本を読んでいる辰彦くんのところへお邪魔する。拙いぺらぺらのおしゃべりで本を読む邪魔をしているのに、辰彦くんはぱたんと本を閉じて、ちゃんとわたしの目を見て聞いてくれる。そうして時折、笑う。
「いや、すまない。一生懸命話してくれる君が可愛くて」
そう言われた時なんか、うれしくって死んじゃいそうだった。
帰り道は手を繋いでくれるし、デートの時もやさしくエスコートしてくれる。はじめてのちゅうもやさしかった。だから無理させてないかなとか、我慢させてないかなって心配になる時もあるけど、でも、ちゃんとわたしのことが好きって伝えてくれる辰彦くんを信じて、わたしも辰彦くんが好きって精一杯伝えていく。
誰もいない教室、辰彦くんのおひざの上に乗って、今日も顔を寄せあってキスをした。最近はわたしのほうがガマンできなくて、いちどキスをしたらなかなか辰彦くんから離れられない。すりすり擦り寄って、赤ちゃんみたいに甘えてしまう。
「こら……もう、仕方ないね」
「えへへ! 辰彦くん、すきい」
「私のかわいい恋人は甘えん坊さんだ。よしよし……」
きゅうきゅうと寄り添っていると、おなかがきゅんと疼いてしまう。それでまた擦り寄ってキスをして、見つめあって手を重ねて。
辰彦くんはわたしがえっちしたがっているのをきっと分かっていて、だって、辰彦くんの右手の人差し指はわたしのスカートの端をくるくると弄っている。
「いい子だ……」
わたしと重ねた左手は、わたしの手を巻き込んで、わたしの腿のつけ根をするするとなぞる。辰彦くんの爪のさき、そのほんのすこし先には、誰にも触られたことのない大事なトコロがあって、俯いた辰彦くんの瞳は、きっとそこを見てる。
「ぁ、……ねえ、」
辰彦くんがゆらゆらとわたしを小刻みに揺らしはじめたから、わたしの声色は明確に誘うものになる。
それを察したみたいで、辰彦くんはいじわるそうに「ん?」ととぼけるのだ。
「ねえ……辰彦くん、さわって。……」
「もうこんなに触れ合っているだろう? 欲張りだね」
「ちがうっ、ねえ、ここ……さわって」
わたしが自分で自分のお股を摩ると、辰彦くんは愉快そうに喉を鳴らしてそれを邪魔する。
「こら、はしたないよ」
「だって、辰彦くんがほしい」
「私は君のものだろう」
「そうじゃなくて、……そうだけど、それなら……」
しゅんとして落ち込むと、辰彦くんの腕がわたしをぎゅっと抱きしめてくれる。
「学校では、だめだよ」
子どもに言い聞かせるような言い方。そういうつもりじゃないんだろうけど、ワガママっ子扱いされたような気がしてさらに悲しくなってしまった。顔を正面に向けて、逸らしてしまう。
……悲しくなったけれど、辰彦くんがわたしの耳元でふふ、と笑って、それである事に気付く。
「学校では、だめ?」
辰彦くんのほうを向き直る。
辰彦くんはやさしく、でもいつもより、ちょっとだけこわく見えるような顔で微笑んでいた。
「……明日、私の両親が家を空けるんだ」
辰彦くんの指が、わたしの頬を撫でる。そうしてわたしの瞳をじっと見つめると、逃がさない、って言うように鼻にキスをされる。
思わず、ぎゅっと目を閉じてしまった。
「お泊まりの準備をしておいで。お望み通りにしてあげよう」
辰彦くんの家にお邪魔するのは初めてではない。今までに何度かおうちデートはしたことがある。
けれどお泊まりなんて初めてで、しかもえっちだって初めてだ。
ドキドキしながら荷造りをして、もちろん親には、友達の家でお泊まり会をするだけなんて嘘をついて。
「いらっしゃい。靴は揃えなくて良いよ」
そういうつもりだからかもしれないけれど、前と同じように迎え入れてくれる辰彦くんの笑顔も、どこか妖艶に見える。辰彦くんを見つめると、ドキドキはもっと強くなった。自分の鼓動がうるさくって、辰彦くんにも聴こえていないか心配になるくらい。
辰彦くんのお部屋までの道のり、腰に手を回された。
それで、まだお昼だけど、下準備みたいなものはもう始まってるんだなと思った。どうしても口数が少なくなってしまう。
恥ずかしいけれど、それでも寄り添いたくて、辰彦くんの手から逃げずに寄り添う。それで辰彦くんも嬉しそうにしてくれた。
辰彦くんの家はとても大きい一軒家で、ひとりひとり自分用の部屋があるみたい。それだけじゃなくてそれぞれの寝室もあって、トイレとバスルームも幾つかあるらしい。家族4人が全員いても、自分のタイミングでお風呂に入れると聞いた時は本当に羨ましいと思った。
長い廊下をふたりで歩いていると、ひとつのドアががちゃりと開いた。進行方向のドアだったから、わたしたちの足は必然的に止まる。
中から出てきた人を認識して、咄嗟に挨拶をした。
「こ、こんにちは。お邪魔してます」
「……」
…………その人は一瞬動きを止めてちら、とわたしを見たけれど、何も言わずにふいと顔を背けて別の部屋へ入っていってしまった。
辰彦くんの双子の兄、澁澤龍彦さん。
辰彦くんとおんなじ白い長髪に赤い瞳。流石双子と言うべきか、外見では全く見分けがつかない。声は聴いたことがないけれど、声もそっくりって辰彦くんが教えてくれた。
「……無視されてしまったね。大丈夫、奴のことは気にしなくて良いよ」
とても寡黙な人で、辰彦くんや家族との仲はあまり良くないみたい。
正直、わたしも苦手だ。辰彦くんと瓜二つだけど、性格は全然違う。辰彦くんはすごくやさしいのに、龍彦さんはさっきみたいにとても冷たい。
なにより、あのつめたい目。何かを怒られてるみたいで怖くなる。
あんまり関わる機会はないから良いけれど、時折出くわした時わたしに向ける瞳はいつも冷ややかなもので、ちょっとこわい。まだまだ先の話だし、本当に辰彦くんとずっと一緒に居られるとは限らないけど、将来義兄になるかもしれない人って考えると、なんだか気が滅入ってしまう。
「えへ……嫌われちゃってるのかなあ」
辰彦くんのお兄さんだし、本当は仲良くしたいんだけどなあ。
わたしの心のもやもやを察してか、辰彦くんはわたしに向き直って、わたしの頭をすり、と撫でてくれる。
「……奴のことより、私のことを考えて?」
甘えるような声で囁かれて、現金だけれど、わたしの瞼はまたとろんとしてしまった。
辰彦くんの腕に絡みついて、甘えたような声を出す。すると辰彦くんはうざったがらないで、心から可愛がって受け入れてくれる。
「夜が楽しみだね。……」
それからは、夜ごはんまでお勉強を見てもらって、だいすきな辰彦くんとずっとおなじ空間にいた。
時々触れ合う手が焦れったくて、今すぐにえっちしたくなるのをぐっとがまんする。
インランな女だなんて思われたくないから頑張るけど、でも辰彦くんにはばれちゃっている気もする。お股のところがきゅんきゅんして、どうしてももぞもぞしてしまうから。
辰彦くんはじっとわたしを見て、意地悪く笑う。
「…………どうしたのかな。手が止まっているよ」
「あ、……えっと、」
触ってほしい、なんて言えなくて、夜のお楽しみだし、そんなことを言っちゃう勇気もないから。
辰彦くんは分かっていて、わたしの指の先をつんとつつく。
つつかれた指先が熱くて、なんだか泣きそうになった。
「……お、お手洗い借りるね!」
辰彦くんのおへんじを待つ前に、辰彦くんのお部屋から飛び出してしまった。
やっちゃった。
情けなくて、頭をぐしゃぐしゃとする。
……まだトイレに行きたいわけじゃなかったけど、身だしなみを整えようと思って廊下をうろつく。
お手洗いはどこにあるんだろう。辰彦くんのお家に来たのは数回目だけど、今までなんだか恥ずかしくて、トイレを借りたことはなかった。だって、今だって、恥ずかしい。辰彦くんに向かって、トイレ行きたいなんて。
世の中の同居してる恋人たちは、どうやって相手にバレないようにトイレを使ってるんだろう。それとも、しばらくしたら恥ずかしさなんてなくなるくらい、慣れるものなのかな。……
考えながら歩いていると、ふいに後ろのドアが開く。辰彦くんが追ってきてくれたのかなとも思ったけど、それにしては音が近すぎる。
「……あっ。……」
「……」
出てきた人はわたしを見ると、ぴたりと動きを綺麗に止めてしまう。そうしてすこし驚いたような瞳を、すぐにつめたいものに変えてしまった。
また、辰彦くんのお兄さんに出会ってしまった。こんな言い方は良くないけど、辰彦くんがいない時にばったり会ってしまうとさっき以上に気まずい。
お兄さんはひとりで廊下に居るわたしを不審そうに見つめて、緩慢に口を開いた。
「どうかしたのか」
……初めて聞いたお兄さんの声はほんとうに辰彦くんそっくりで、おへんじを忘れてつい聞き入ってしまう。でもはっとして、お手洗いを探していることを伝えると、お兄さんはまたすこし黙ってから、ふいとそっぽを向いて歩きはじめてしまった。
あれ、教えてくれたりはしないんだ。
そう思ってぽかんとしていると、お兄さんは幾つか並んでいるドアのひとつを開いて、そのままこちらへ戻ってくる。そうしてわたしをも通り過ぎると、また部屋の中に入っていってしまった。
どういうことだろう。変に思って、開いているドアを見に行ってみると、中はとても広いバスルームになっていた。洗面所、トイレ、シャワールーム、それからバスタブがひとつの部屋に収まっているけれど、ひとつひとつの機能のための面積がしっかり広い。貴族のひとのお部屋みたい。
トイレがあるのを見るに、お兄さん、一応案内してくれたってこと? ありがたいけど、それにしたってもうちょっと言葉をかけてくれてもいい気がする。案内してもらった分際で、そんなこと言えないけど。
辰彦くんのもとへ急いで戻ると、からかい過ぎたね、と謝ってくれた。
全然謝ることじゃない。大丈夫だよって笑って、それからは夕ごはんの支度を一緒にした。辰彦くんと一緒に買い物に行って、辰彦くんと一緒に野菜を切ったり、お鍋で煮たりした。ふふっと笑った辰彦くんが、なんだか夫婦みたいだ、なんて言うから、間違って指を切っちゃいそうになった。
辰彦くんはいっつもわたしをドキドキさせる。それを、ちょっとだけずるく思う。
わたしだって辰彦くんをドキドキさせたい。
「じゃあ、先にお風呂に入ってくるよ」
話し合って、髪を乾かすのにより時間がかかる辰彦くんが先にお風呂に入ることになった。辰彦くんを見送って、しめしめと笑う。
辰彦くんはわたしを先に入らせようとしてくれたけど、髪の毛の長さを理由に無理やり譲った。だって、辰彦くんにドッキリを仕掛けたいから。
頭が良い辰彦くんを、わたしが出し抜けるわけはない。けれど、恥ずかしいのをガマンしてちょっと大胆なことをすれば、さすがの辰彦くんもビックリというか、ドキドキしてくれるはず!
早速お風呂の準備をして、5分くらいは大人しく待つ。辰彦くんが衣服を脱いでシャワールームに入ったあと、わたしも辰彦くんの後を追ってこっそりシャワールームに入るのだ。
そして、後ろから抱きつく!
これで計画はカンペキ。きっと辰彦くんはドキドキして、辰彦くんだってえっちな気分になっちゃうはず。そうやって一緒にお風呂に入って、ベッドまでドキドキして向かう。ベッドに行ったら、きっとすぐにはじめてのえっちが始まっちゃうのだろう。
考えただけでも辰彦くんが恋しくなった。まだすこししか経ってないけど、もうガマンできないからお風呂の部屋へ向かう。脱衣場で手早く、でも音を立てないように服を脱いだら、辰彦くんがいる浴室にこっそり足を踏み入れた。
透明なガラスケースのシャワールームで、ざあざあと白い髪が濡れている。浴室にはもくもくと湯気が立ち込めていて、辰彦くんの背中がやけに遠く見えた。
足音を立てないように、そろそろと近づく。辰彦くんがシャワーを止める前に、なんとかシャワールームの扉を開けて抱きつきたい。
はやる気持ちを抑えつつ、辿り着いた扉の前。
ゆっくり扉の取っ手に手をかけて、慎重に引いて、……侵入とともに、その白くて広い背中にぴょんと抱きつく!
辰彦くんは一瞬ビクッと体を震わせ、バッとこちらを振り向いた。
「えへへ……来ちゃった!」
イタズラ成功! ニコッと笑いかけると、辰彦くんは目を見開いたまま無言でわたしをじっと見つめていた。
そんな様子を見て、ほんとうにわたしが辰彦くんをビックリさせられたんだ、と感動した。うれしくて、どうせならもっと大胆になっちゃおう、と抱きついた体をすりすりと擦り合わせる。
「ね、いっしょにお風呂はいろ? わたし、辰彦くんと一緒がいい」
辰彦くんの背中に擦れた胸が気持ちいい。辰彦くんに仕掛けたドッキリなのに、わたしもドキドキしてしまう。
わたしの口から、甘い吐息がもれる。それを聞いたあと、辰彦くんはやっと動きはじめた。シャワーを切って、背中に抱きついたわたしを絡めとって、わたしに向き直る。わたしの背中と腰に手を回して、……いつもみたいにやさしく微笑んでくれた。
あ、……いつもの辰彦くんのやさしい眼差しだ。ドッキリ、ちょっと怒られるかもって思ったけど、ゆるしてくれたんだ。
やっぱり、やさしい。
しばらく見つめあって、ドキドキして、それから辰彦くんがわたしに噛みつくようなキスを始めた。腰に回した手をぎゅっとして離さない、口の中まで掻き乱すようなちゅう。
ディープキスなんかしてもらったことがなくて、驚いた。すごく気持ちいい。でも、らんぼうな仕草の中にも、わたしへの愛を確かに感じる。
「ん、ぁ、つひこくん、……っ」
「……」
だいすき。わたしも頑張って辰彦くんの舌に応える。けれどそのうち息が続かなくなって、ぐったりとされるがままになってしまう。
それを察してくれたのか、辰彦くんはじゅっとわたしの舌をいちど強く吸うと、ちゅぽんと離してくれた。
はあはあと息の上がったわたしを支えてくれながら、耳元でふふ、と笑う。その笑い声もいつもより妖艶で、子宮がきゅんきゅん疼いてしまう。
「たつひこくん、すき、だいすき、……」
「うん」
精一杯伝えて、わたしも辰彦くんをぎゅっと抱きしめる。
「私も、好きだよ」
すると、お股のところに、熱い何かがぷちゅんと当たったのを感じた。
気持ちいいところに当たって、それだけであんあん喘いでしまう。
「ぁ、……たつひこくん」
辰彦くんのおちんちんがわたしのお股に当たって、ふるふると辛そうに震えている。
初めて見るおちんちんに目を奪われていると、突然体をぐるんと半回転させられて、ガラスケースにおっぱいを押し付けられる。下腹部には手を回されて、辰彦くんに向かっておしりを突き出すようなポーズをとらされてしまった。
「あっぁ、たつひこくん、」
「ああ。……」
おしりの間を辰彦くんのおちんちんに何度か擦り通されて、はじめての感覚に熱が増していく。なんだか、おしりの穴まできゅんきゅんしてきた。
それが終えられると、ついにお股の、赤ちゃんができちゃう穴に、おっきくなったおちんちんを突き立てられる。
「ぁっ、え? たつひこ、くん、?」
「ふふ……。うん、うん……」
まさかこのままお風呂でえっちするとは思ってなくて、想像より早い辰彦くんの行動にビックリしてしまう。
でも、それだけドキドキしてくれたってことだから、うれしくって、こんなアブノーマルなはじめてでも、良いや、って思えてしまった。
「あ……、っ、はいって、る、……」
みちみちと、すこしずつ穴を拡げられていくのが不思議と分かる。ちょっとだけ痛くて、でもはじめからお股は濡れちゃってたから、すんなりはいってくる。
挿入の間、辰彦くんは何度もキスをしてくれた。
全部はいったあと、辰彦くんはすぐにがつがつと動きを始めた。よく音の響くシャワールーム内に、ぱん、ぱんとわたしたちの肌がぶつかる音が響く。突き上げられるたびに頭がまっしろになって、必死で壁に縋りついた。
「あっあっあっあっ、あ、……っ」
「ん……、」
びくびくと辰彦くんの腰が跳ねて、そのすこしあとに突然おなかの中が熱くなる。びゅるりと何かが中のお肉の壁に当たって、それが辰彦くんの腰の振動にシェイクされて。
わたしの体は絶頂して、仰け反ってしまう。
……。辰彦くんはわたしの体を支えて、ゆっくりとバスタブの中に入れてくれた。
そのまま浴室から出ていってしまおうとするから、咄嗟に引き留める。
「ぁ、……いっしょにはいって、くれないの?」
自然とえっちな声で誘って、それでも辰彦くんはこちらを振り向かなかった。
「ゆっくり入っていなさい」
照れ隠しなのかな。
やさしい声色なのに、子どもに言いつけるみたいな口調で喋るのがおかしくて、置いていかれる寂しさなんか飛んでいってしまった。
なんだか、いつにも増して大人っぽい。またドキドキしてきた。
夜も、えっちしてくれるのかな。
落ち着いてからお風呂を済ませて、のろのろと辰彦くんのお部屋に戻ると、もう辰彦くんは髪の毛を乾かした状態で寛いでいた。
辰彦くんはわたしを見ると、よく風呂場の場所が分かったね、と言った。
「お兄さんが教えてくれたの」
「彼奴が? らしくないことをしたものだね」
それからは映画を一本だけ観て、そのうちに手を重ねていた。擦り寄ったり、肩を預けたりして、さっきの行為の余韻を楽しむ。楽しみながら、次のえっちの下準備をしていく。
ちら、と横を向くと、すぐ傍にすきなひとのまなざしがある。ぼうっとテレビを見てる。けれど、わたしに見られていることに気づくと、辰彦くんもこっちを向いてくれる。
「そろそろ、眠る?」
ドキドキするような優しいまなざし。
それでもどこか、こわい。
慎重に絡めとるみたいな声色と指先で、わたしをベッドまで連れていく。
ベッドの端にふたり座って、すこしの沈黙。
雰囲気に押されて、辰彦くんもさすがにドキドキしているのか、さっきみたいに性急にキスはしなかった。わたしの頬を撫でて、視線を絡めて、やっと浅いキスをする。
「……良い?」
そんなこと、もう聞かないでほしい。恥ずかしくなっちゃう。
さっきは自分で服を脱いじゃったから、今度は辰彦くんにぬがしてほしくて、お返事のかわりに辰彦くんの両手をきゅっと握って、パジャマのいちばん上のボタンのところに持っていく。
辰彦くんはちょっとびっくりした顔をした後、なんだかこわいような、後ずさりしちゃいそうな雰囲気に変わった。つい、体がびくっと震える。
それを見た辰彦くんが、わらう。
「もう、逃げられないよ。それでも良い?」
選択肢を与えるようなことを言って、なのにもう逃がさない気でいる。
ちぐはぐで、おそろしくて、それでも早く乱暴にしてほしくて仕方ない。頷く。辰彦くんの腕に胸をすり付ける。
「……はやく、」
さわって。
言うなり、辰彦くんの指は、ちょっとした熱とともにわたしのパジャマのボタンをするする外していく。
下着が露わになったところで押し倒されて、上からじっと見下ろされた。
……辰彦くんも雑にパジャマを脱いで、わたしはトップスに続いてボトムスも脱がされる。
辰彦くんの裸と、わたしの裸が、すぐ傍にある。
辰彦くんの胸板に見とれていると、片手をとられて辰彦くんの胸に当てられた。
心臓が、ドクドク鳴ってる。
「…………。やさしく、するつもりだけれど」
伏せた瞼から、あかい瞳がわたしを覗く。
すこし潤んでいて、ほんとうに綺麗だと思った。
「なまえはほんとうに可愛くて可愛くて、仕方ないから。歯止めが効くかはわからない。……今は何故だか、私で乱れる君が見たくってたまらないし、どうしてか君を泣かせてやりたいと思ってしまう。大事に思って、いるのにね」
ブラの端から辰彦くんの指が差し込まれて、乳首を包み込まれる。
「ぁ……」
「……ほら。その上君はそうやって、私を喜ばせてしまう。ここだって、私は食べたくて仕方ないよ」
内側からブラが持ち上げられて、辰彦くんの前にわたしの胸がさらされる。もうぴんと張った乳首は、辰彦くんにちゅうされたくて仕方ないみたいに色付いて熟れていた。
見られているのが恥ずかしくて、でも見てほしくて、体をよじる。ちいさいけど、胸が揺れて、辰彦くんをきっと、誘う。そう、誘いたい。
辰彦くんに腕を伸ばす。はやく、さわってほしい。
「…………きて。おねがい……」
幼稚な誘い方で、涙が出そうにもなった。
やさしい辰彦くんがだいすき。でも、さっきみたいに、有無を言わさずひどくしてほしい。
だって、えっちの時まで気を遣わないでほしい。
羞恥心でぼんやりしていると、急に白髪が視界いっぱいに広がる。
「……っどうしてそんなに可愛いんだろうね……」
つよい、つよい力で掻き抱かれたのだとわかった。
こんな力で辰彦くんに抱きしめられたこと、ない。いたくて、くるしくて、でも何故か気持ちいい。
抱かれた勢いで浮いた背中に辰彦くんの指が這って、下着のホックが外される。抜き取られて、また押し倒される。
それからは容赦なく苦しいキスをされて、胸を揉みしだかれた。快感で足が揺れて、必死で辰彦くんにしがみつく。もうお股もどろどろで、下着越しに辰彦くんの固くておっきなおちんちんと何度も擦りあった。
「んぁあ、っ たちゅ、ん、んぅ、」
「っ……、んっ、なまえ……」
わたしなんて、それだけでもう何度かイッてしまっていて、変な声を出して、変な顔もいっぱいしちゃったような気がする。でも辰彦くんもわたしに夢中でいてくれて、お互い必死でお互いを求めあった。
ぜえはあと呼吸を整える最中、辰彦くんの手がわたしのパンツをお股かららんぼうに剥がして、自分の下着もずるりと降ろした。
その拍子にズンとさらされた辰彦くんのおちんちんを見て、心拍数がまた一気に跳ね上がる。苦しそうにびくびく動いて、わたしのお股を狙っているのが本能でわかった。
はやく、ほしい。自分からお股を擦り付けにいく。
「、こら、」
割れ目が裂けて、くぷくぷと辰彦くんのおちんちんを迎えて。
……はやく、奥までほしい。
なのに辰彦くんは、すこし慌てたようにしてわたしから離れた。
「ぇっ……、やっ、たつひこくん、やだ、きてぇ……」
「こら……だめだろう、ゴムを付けないと、……いい子で待っていなさい、すこしだけだから……」
辰彦くんはわたしをすこし撫でてから、ベッドサイドに用意してくれていたらしいコンドームを開けておちんちんに付ける。
さっき、そんなの気にしないでおちんちんをいれてくれたのに。どうして? きっと大丈夫なのに。
ガマンできなくて、自分でぱかりと足を開けて待つ。はやく、はやくほしい。
…………つけ終わってわたしに向き直った辰彦くんは、わたしのお股を見て喉を鳴らす。
「……嗚呼、なんて……。……君、淫乱だったんだね。ふふ……いや、私がそうしてしまったのかな」
「はやくっはやくっ、たつひこくん、おちんちんちょうだい? もうがまん、できないよお」
「っ、こら……もう。おねだりが上手だね。良いよ……」
ゴムのついたおちんちんがやっとわたしのお股について、逃げられないように腰を固定されながら、
「挿れるからね、」
容赦なく突き立てられる。
さっき開けられた穴に、また辰彦くんのおちんちんがぴったり収まって、ああわたし、わたしは辰彦くんのためだけに作られたんだって知った。
わたしも辰彦くんのおちんちんをお迎えする。うれしくてうれしくて、辰彦くんのおちんちんをぎゅうぎゅうに締めつけると、辰彦くんは赤らめた頬で、とても苦しそうな顔をした。
「うっ……、は、ぁ、……なまえ……」
「すき、すき、たつひこくん、だいすき……」
「っふふ、わ、たしも、すきだよ……」
うごく、からね。
もう了承を取る気もない台詞のあと、辰彦くんのおちんちんが何度も何度もわたしの中を行ったり来たりした。どちゅん、どちゅん、って、1回1回がとても重い。そのたびに気持ちいいところに当たって、喉からへんな声ばかり出た。
それがだんだんはやくなって、わたしはもう何度も絶頂して、辰彦くんの息もほんとうに苦しそうになって。
「っ、あ、なまえ、なまえ……!」
「んぁ、ぁっ、あっ、たつひ、ぃ、っん、あああっ……!!」
遂にゴム越しに辰彦くんの精液が注がれて、ふたりでびくびく震えながらからだをぴんと伸ばして快楽に悶える。
辰彦くんの白髪がばさばさと揺れて、……ふとスイッチが切れたように、わたしの胸に倒れた。
おちんちんがはいったまま。
ぎゅっと、だきしめあう。
「……っ、……」
「……、……ぁ……」
しばらくそのままでいて、熱を与えあって、冷ましあって、……辰彦くんが上体をなんとか起こして、わたしからおちんちんをぬぽんと抜いた。
「っ、あん」
それも気持ちよくて、体が震える。
辰彦くんはわたしの声を聴いて、また熱っぽい視線をわたしに向けた。けれど、わたしの上がった息を見て、…………いつもみたいに、やさしく微笑んだ。
「おやすみ」
ゴムを捨てた辰彦くんが、わたしの頭をやさしく撫でる。まだべたべたの体どうし、ふたりでだきしめあって、眠った。
ふたりでリビングへ降りると、辰彦くんのお兄さんが先に朝食をとっていた。
辰彦くんと一緒に起きておはようのちゅうをして、気恥ずかしさで笑いあって、一緒にお風呂に入った。
そのあとの、遅めの朝食。
「あ、おはようございます!」
「うん、おはよう」
お兄さんはトーストを食べ終えて、ゆったりコーヒーを飲んでいるところだった。珍しく挨拶にもおへんじをしてくれて、わたしの気分は昨日に引き続いてとても良い。
辰彦くんは、わたしの挨拶におへんじしたお兄さんのほうをちらと睨むように見て、それからわたしに甘く微笑む。
「朝は何が良いかな。パンしかないけれど、食パンもあるしバゲットもあるよ。それとも、甘いものがいい?」
それが当たり前なのか、辰彦くんはお兄さんにおはようを言わなかった。
「なんでも、なまえの好きなものを食べようね」
昨日の余韻なのか、辰彦くんの声はいつもより甘くとろけていた。距離もちかくて、うれしくなる。わたしの声も自然と甘くなる。
「辰彦くんといっしょのがいい」
「ふふ……じゃあ、マフィンを幾つか食べようか」
「うん!」
甘い甘い、たのしい朝の時間。
冷めたような短い笑いがリビングに響く。
「朝からお熱いな」
…………。コーヒーを飲み干したお兄さんが、ゆっくり席を立ってお皿を片付けにこっちに来る。
わたしは急いで退いて、辰彦くんは鬱陶しそうに身を半歩だけ退かした。
「なに、そう邪険にしないでくれ。すぐ出ていくさ」
シンクにお皿を置いて、どうしてかわたしのほうに向き直る。
「ああ、きみ」
数歩歩いて、わたしの前でぴたっと止まった。至近距離で見下ろされる。
なんだか、ひとみがヘン。愛おしい仕草で髪を耳にかけられて、固まる。
「私の食器を、洗っておいてくれるね」
…………。咄嗟に、ハイ、という返事が口から出た。辰彦くんが隣でお兄さんを睨んで、お兄さんの肩を掴んで押して、わたしから遠ざける。
「何のつもりだ」
こわい声でたしなめられても、お兄さんはわたしを見つめて微笑んでいた。
辰彦くんと、おんなじ顔で。
「イイヤ……、……。…………」
うっすらと笑んだ目を細めて、わたしの隅々を見て、……。
なんだか、こわい。
辰彦くんのうしろに回る。辰彦くんはわたしの手を握って、撫でてくれた。お兄さんに向き直る。
「何のつもりか知らないが、彼女にちょっかいを出すのはやめてもらえないか」
「? ……それは彼女の方だろ」
「はあ?」
お兄さんは首を傾げて、やっぱりわたしを見た。それから、やっと辰彦くんと目を合わせる。
「……まあ、良い。お前の邪魔をするつもりは無いさ。だが、そう子どもみたいにいつまでも独り占めはするなよ」
辰彦くんの、は、という声が漏れた。
なんだか、よくわからない。
よくわからないことを言って、お兄さんはキッチンから出ていった。ぱたり、ぱた、スリッパで歩いていく音がする。
「ああ、そうだ」
背中を向けたまま、お兄さんは振り返らないでドアノブに手をかける。
振り返らない。
「お前、性教育はきちんとしておいてやりなさい」
ドアが半開きのまま、放置される。
辰彦くんとおなじ色の髪が揺れて、止まった。
「そのあたりの知識が無いのか、何の戸惑いも無かったよ……ああ、今日は時間があるから、私が教えようか」
振り返る。わたしを見つめる。
「アフターピルはそこに置いておいたから、飲みたければ飲みなさい。私はどちらでも構わないよ。……と言っても、その様子ではどういったものかも分からないのだろうね。幾つか資料を用意しておこう。食べ終わったら、私の部屋においで」