ペットショップのねずちゃん

がさがさ「あ、こんにちは」「……」気づかなかったフリ「ねえーっこんにちは」「……」「えい」がしゃん!「うわ」「わーっゲージが!」ばれないように、反対側の入り口から入ったのに、バレてしまった「すみませんなまえさん、あとですぐ片付けますので」「あ、わたしは大丈夫ですよ」「今日はおかね持ってきましたか」「……持ってきてないよー」「275円です」「はあい」ちゃりん「あ! 持ってきてるじゃないですか」「これはキンギョのエサ代なの」「そのおかねでぼくを買えばいいじゃないですか」「ケタがちがうでしょ」この子はシロネズミのフョードルちゃん。ペットショップで知り合ったねずちゃんで、なぜだかわたしに飼われたがっている。今日も早く退散だっ



後日

「あ! 来た」隠れるのはあきらめた「やほ」「こっち来てください、こっち」がじがじ「やだ」「ゲージ壊しますよ。店員さんにメイワクかけますよ」「ムム」知り合いなので、迷惑はかけたくない「もーしょうがないな、なあに」「なでてください、なでてー」「ゲージ入ってるからむーりー」「あ、なまえさん、その子ゲージから出しましょうか? 抱っこしてみます?」「え」「やったー」

「どうですか? シロネズミの赤ちゃんですよ」「ごろごろ」「あはは、しろーい」「ねえどうですか、ぼくかわいいでしょう」きゅるん「えっとー、しろいね」「そうでしょう、かわいいでしょう」「はなしきいてない」「飼いたくなっちゃうでしょう」「まあー」「飼いたくなっちゃいました?」「ううん」「なんでっ」「いたァ!」指を思いっきり噛まれた「うわあ! なまえさんすみません! 大丈夫ですか!?」「だめなので、ゲージに戻してあげてください」「あっ」「すみません! すぐ戻しますね」「いやーっごめんなさい、もう噛まないから、もっとなでてください」



また後日

「あっなまえさん、やっと買いに来ましたか」「キンギョの水草を買いに来たよ」「ちがう!」「ちがわない」お金を払って出口へ「もーっいつになったら飼ってくれるんですか」「飼わないよ」「なんでっ」「だからうちキンギョいるんだってば」「キンギョいるからなんですか」「キンギョいるからペットはじゅうぶんなの」「なんで!」「なんでも!」「じゃあキンギョがしんだら飼ってくださいますね」「イヤなこと言うなばか」「ばかって言った!」「言ったよーん」「傷つきました、お詫びに飼ってください」「やだよーん」「飼って飼って飼って飼って」「飼わないよーん」退店「……」

「キンギョがしんだら、飼ってくださいますね」



またまた後日

キンギョが急に死んだ。キンギョが死んだので、もうペットショップに行く必要はなくなった。あーあ。








いつ?

なまえさん」ぺち「……」すやすや「なまえさんってば」ぺちち「ふがっ!?」夜。眠っていたら急に呼吸が出来なくなって飛び起きた「うわーっ」ころころり「えっ!? なんでねずちゃんがここに」飛び起きた途端、わたしの顔面からシロネズミがころころと布団の上に落っこちていった「なんでここに。迷子? とりあえず店員さんに……」「脱走してきたので、連絡は不要です」「脱走してきたの!?」なんてこった「いやでも連絡はしなきゃ」「お店のなか、程よく荒らしてきました」「え? なんで?」「いま連絡したら、貴女が侵入して盗んだと思われますよ」「げげ」なんてこったい「さあ、ぼくと暮らしましょう」