澁澤

君は本当に非力で、私の気まぐれひとつでどうにでもなってしまうような、取るに足らない人間のひとりだった「君は本当に、どうしようもないな」君は死んでも非力だ。仕方がないから、この私が特別に弔ってあげよう



フョードル

「フョードル」「なんです」「わたしが死んだらさあ、」貴女の為の鎮魂歌。ぼくは貴女に触れながら、それをしきりに弾いている。いつ手を止めればいいのだろう。分からないけれど、ぼくはまだ弾き足りなかった。まだ傍に居たかったんです「フョードル、わたしが死んだらさあ」貴女で作った弦は、とてもいい音色ですよ「それで、骨は鍵盤なんかにしちゃってさあ」ぼくはチェロを弾きますから、さあ、貴女はピアノをどうぞ



中島

自分が死にそうになった事は何度もあるけど、大事な人が死んでしまう、その光景とその時の自分の感情に出会うのは初めてで、どうすればいいのかわからなかった。もう会えないということ? それだけ考えると、寂しい気がした。でも、不思議と安心するような気もした。
守れなかった。
だから、もう守る必要はないんだ。

焼かれた、しろいはねを拾う「さようなら、僕の世界」今日から僕はどんな事でもできる気がした





何処へでも連れて行ってよ。いつもみたいに、私の手を引いて何処へでも連れて行って。貴女が行く場所は私にとって何処でも楽しいものになる、それは分かっているから「何処へ行ったの」靴を鳴らして、貴女の歩く道を教えて。大声で笑って、貴女の居場所を教えて。私に、貴女の手を握らせて。「なまえ、何処へ行ったの」縋る死体すら無いなんて、



フョードル

貴女がぼくのものにならないことは始めからわかっていました。だからといって、ぼくは強硬手段をとるつもりもありませんでした「ほら見てフョードル、子どもたちが遊んでいるよ」「可愛いですね」「まさか。ちいさくて気味が悪い」「今日も貴女は可愛げがありませんね」「そうでしょ」貴女はいつもぼくの肯定を否定し、否定を肯定しました。だから、ぼくは貴女が亡くなっても、貴女の為に祈ってはいけないのでしょう?

それとも、ぼくが貴女の死を受け入れれば、貴女は再臨するのでしょうか



太宰

「おまえだけは、」わかってくれると信じてたのに。そう言った彼女はだんだんと命を取り戻していく。彼女の自傷行為にも慣れたもので、それくらいは許してあげていたけれどね「随分、醜くなったものだね」飛び降りで潰れた顔、薬品で爛れた皮膚、彼女が生きるにしては耐えられない容姿なのだろう「其れでも、生きてもらうよ」私と心中するまでは、ぜったい逃がさないぞー!